小澤征爾指揮のワグナー「タンホイザー」、オペラ・バスチーユ座。 小澤はフランスでは本当に人気があるらしく、オケボックスに登場しただけで、まだ演奏していないのに「ブラボー!」の声が聞こえてきそうなほどの歓声。 吟遊詩人のタンホイザーは、ヴィーナスとの愛欲に溺れながらも仲間のもとに戻ってくるが、「愛の本質」についての歌合戦で、愛の精神性について歌う他の詩人たちを前に愛欲とヴィーナスを賛美して批判され、悔い改めてローマへの巡礼の旅に出るが、法王に許されず、彼を愛する清純なエリザベートの犠牲により救われるというお話・・・なのだが、今回は、演出家ロバート・カーセンがタンホイザーを画家に置き換え、芸術作品のスキャンダラス性と革新性に焦点を当てた大胆な演出による上演。 オペラ・ファンの間ではきっと好みの分かれる趣向であるとは思うが、芸術作品のスキャンダラス性というテーマは、音楽や詩より絵画の方がわかりやすいのは確か。、同時代の批評家たちには酷評された数多くの作品が、今では堂々と「名作」としてルーブルやオルセーに展示されているパリならでのは発想か。プログラムも、表紙はマネの「草上の昼食」だし、オルセー美術館所蔵品のなかでもっともスキャンダルな作品の一つと言われるクールベの「世界の起源」も図版として載っているし。 しかし、かの有名な「タンホイザー序曲」の演奏が始まるや、舞台上に登場する文字通り一糸まとわぬオールヌードの女性にはびっくり。しかも、美しいヒップを見せて横たわるその女性を囲んで、半裸の若い男の子たちがのた打ち回るし、唖然として、これじゃ、誰も序曲なんて聞いていないぞと思っちゃう。 カーセンの演出は以前もキングコングやマリリン・モンローが出てくるオペラを見たけれど、演劇と違ってオペラにおけるあまりに革新的な演出は、メインであるはずの歌や音楽を鑑賞する妨げになるような気もするが、でもオペラは総合芸術なので、そのすべてを受け入れられる懐の深さがあって初めてオペラを鑑賞する資格があるのかとも思う。 いずれにしろ、演奏も歌手も、この「奇抜な」演出に負けないほどの迫力。特にタンホイザーを演じたステファン・グールド(写真)とその親友役のマチアス・ゲルネはすばらしく、壮大で、情感豊かで、深みのある彼らの歌声が、広い会場をすっぽりと包み込む。有名な巡礼の歌も、「夕星の歌」もとてもよくて、オペラ初心者だけど、至福の一夜を堪能。 Direction musicale :Seiji Ozawa Mise en scène :Robert Carsen Hermann :Franz Josef Selig Tannhäuser :Stephen Gould Wolfram von Eschenbach :Matthias Goerne Walther von der Vogelweide :Michael König Biterolf :Ralf Lukas Heinrich der Schreiber: Andreas Conrad Reinmar von Zweter :Wojtek Smilek Elisabeth: Eva-Maria Westbroek Venus :Béatrice Uria-Monzon Photo by Opera National de Paris
by MadameSanma
| 2007-12-24 17:27
| イベント&スペクタクル
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